高次脳機能障害 失認について

失認は、感覚能力は保たれているのに、ある感覚(視覚・聴覚・触覚など)を介して対象を認知するができなくなった状態です。

視覚・聴覚・触覚などの他、病態や空間などの認知ができなくなることもあります。

視覚失認、聴覚失認、触覚失認、身体失認、病態失認、視空間認知障害など様々な失認があります。

 

*代表的な失認の症状*

<視覚失認>

 見えているにもかかわらず、認識できない

・物体失認:見えている物が何か認識できない

・相貌失認:人の顔や表情が認識できない

・色彩失認:見ている色が何色か分からない

・環境失認:環境を視覚的に認識できない

 

<聴覚失認>

 聞こえているにもかかわらず、認識できない

・純粋語聾:言語音が認識できない状態

・環境音失認:環境音が何の音か認識できない

・感覚性失音楽:音楽を認識できない状態

 

<触覚失認>

 触っている物が何か認識できない状態

・形態失認:物の大きさ、形を認識できない

・素材失認:物の質感を認識できない

・触覚性失象徴:形態や素材が分かっても、触覚的に物体を認識できない

 

<身体失認>

 身体の認識が上手くできず(特に麻痺側の上下肢にみられやすい)、存在しないかのような行動をとる

 

<病態失認>

 病態を認識できず、麻痺を否定したり、歩行できると言ったりする 

 

<視空間認知障害>

・空間定位の障害:遠近感、大きさの比較、

         傾きなどが認識できない

・立体視障害:立体感がとらえられない

・半側空間失認:左右どちらか(主に左)の

        空間のみ認識できない状態

・地誌的失見当:見慣れた場所や建物を見ても  

        どこか分からない

 

 臨床でよくみられる失認は、身体失認、病態失認、半側空間失認です。

 (ことリハの19年の臨床経験では)

 

*対応・アドバイス*

・無理に認識させようとしないで、認識しやすくなる方法・手段を探していきましょう

・失認が起きている感覚以外の感覚を手がかりにしてみましょう

・半側空間失認は、認識しづらい方向へ(主に左)意識を向けることを習慣化することで認識しやすくなります

・身体失認は麻痺側を意識したり、触る習慣をつけることで、麻痺側を認識しやすくなります

・病態失認は、自分の身体をよく観察したり、自分と同じような患者さんを観察することで、自分の病態を認識しやすくなります